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「震災に向きあった記録」

相談員の想いより

 

「震災に向きあった記録」2014 年3 月発行より

震災のとき、相談員はどのように支え合ったか

 東日本大震災では相談員全員が被災者となった。この状況は、支援者が被災者として支援を必要とする側になるという「支援者支援」の課題を生み出した。これは、大規模災害時における医療や福祉、教育等の領域に共通する課題である。市民ボランティアとしての相談員が、このような災害時にどのように行動すればよいかについては、時間をかけて検討すべき課題と考える。仙台いのちの電話では相談活動を一時中止して、相談活動を他地域のいのちの電話にカバーしてもらうよう緊急要請を行った。危機下におけるこうした判断は、相談員の心身の安全と生活を守るために必要かつ重要であり、全国的な連携組織をもついのちの電話だから可能だったと考える。今回のことは、今後の災害発生時における危機対応事例として参照されることになるだろう。
 被災地に居住する相談員に電話やメールで安否確認を
したり、困っていることや必要なものを問合せたりしたことも、いのちの電話の仲間どうしがつながっていることを実感させ、安心や勇気を伝える心の支援になった。
筆者(佐藤)は災害時のストレスや心のケア、電話対応の留意点等に関する資料を提供した。ある相談員の言葉だが「震災前と今では違う自分がいる」という感覚は当時の皆が共有する思いだったと思う。自分自身の心や生活の土台が大きく揺れ動いているときに、普段どおりの相談活動を続けることは困難である。強い使命感をもって無我夢中で動いてしまうことは災害時下にありがちだ
が、ときに無理な歪みや二次的な危険を生み出す恐れがある。その意味で、個々の事情を考慮しながら、相談活動への復帰やその時期を相談員各自の判断に委ねたことも大切な配慮であった。
 震災後、少しずつ相談活動や研修活動が復活してきたとき、いろいろな機会にそれぞれが震災時の体験談を話し出すことがあった。そうした話は自然に漏れ出す、溢れ出すという感じであり、相談員たちは相互にそれを受け止めるためのよい聴き手となった。そういう心の修復の動きについて自覚するところもあり、相談員相互の支援関係が災害時における市民協働の心のケアの実践的モデルとして機能していることを実感することができた。
いのちの電話の中だけでなく、被災地の相談員は家族や地域における心の支援者として被災者支援に関わることができたと考える。
 震災後の三年間に被災地の石巻では、心の支援に関する連続講座の開催や仙台いのちの電話の分室の新設といった積極的な事業展開があった。こうした動きも震災でダウンした私たちの自己肯定感(自分を肯定的に思う気持ち)や自己効力感(自分はやれると思う気持ち)を回復し、高めるための重要な足がかりになったと考える。
そうした地域に開かれた心の支援活動が、地域住民でもある相談員自身を支えていくことになる。今後、市民協働で築く心のセーフティネットは、災害時だけでなく、日常生活全般における心の支援に重要な役割を果たしていくものと期待している。

専門ボランティア 佐藤 静

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